悪人家族

ある町に、2軒の家が隣り合わせに建っていました。


一軒の家は7人暮らしでしたが、いつもにぎやかで一家団欒の楽しそうな声が絶えませんでした。

もう一軒の家は3人の家族なのに、毎日ケンカが絶えず、面白くない日ばかりを送っていました。


どうして隣はいつも睦まじく暮らしているのだろうと、3人家族の主人が、隣の家にそのわけを聞きに行きました。


「あなたの家はいつも仲良く暮らしているのに、私の家ではケンカばかりです。

どうしてなのでしょう?」


すると、隣の家の主人は言いました。

「それはあなたの家が善人ばかりの家だからでしょう。

それに比べて私のところは、悪人ばかりの家だからなんですよ。」


その意味が理解できないので、3人家族の主人はさらに聞きました。

「どうしてもよく分かりません。

悪人ばかりの家だったら、余計にケンカが絶えないはずですし、逆に善人ばかりだったら仲良くするはずですよ。」


「いえ、そんなことはありません。たとえば夕飯のおかずが少なく、ご馳走じゃないとします。


そんなとき、

妻がこんなものしか作れなくてスミマセンと言い、

私は自分の稼ぎが少なくていつも悪いなと言い、

両親はいやいや、私達がいるから、おかずが少なくなって申し訳ないと言い、

子供は学校の帰りが遅くなり、お母さんの手伝いができなくって、ごめんねというんです。


つまり、みんな自分が悪いと思っているので、ケンカしようがないのです。


それに対して、あなたの家ではおそらく、みんな自分は善人だと思っているから、

それぞれ自分の非を認めたがらないのでしょう。」


それを聞いて、訪ねてきた主人は返す言葉がありませんでした。



*涙が止まらないから転載


たきがみ博士
たきがみ博士

  旬(ときめき)亭

  亭主 たきがみ博士